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    六月の読書
    見残しの塔 梅雨の六月は三冊の良い本に巡り会えた。良い本を読むと胸の中に柔らかな真綿で包んだ暖かいものを入れた様な心地よい気持ちになる。これが読書の喜びだろうか。

    見残しの塔「周防国五重塔縁起」 久木綾子 
    人は流転し消え失せ後に塔が残った。
    塔の名は瑠璃光寺五重塔中世室町。
    五重塔の誕生をめぐる人々の数奇な運命を描く歴史小説の大作。(帯の言葉から)

    永享(1429~41)の世から嘉吉(1441~44)文安(1444~49)に掛けて長い年月、塔を建てる為に周防山口に大勢の人が集まり膨大な木材を削り百尺の塔を作り上げたその塔が今も600年の時を超えて立ち続けている。
    大正4年国による塔の解体再建工事の際五重北隅の側柱組物から「このふでぬし弐七」と墨書した巻斗(肘木の上にある小さな升型)が発見された名前は無く花押が押され年号、月日、時刻が明記されていた。この巻斗は国宝に指定され同寺の資料館に展示されている。
    これを見た作者がこれを作った二七歳の若い番匠に思いを馳せ物語りにした。
    小説を書くための準備に14年、執筆に4年を掛けたと言う著者の執念に驚かされるがそのために当時の宮大工の道具の名前や使い方測定の技術などが正確に書かれ。番匠用語もふんだんに使われ真実性がある。
    それぞれ生身の命を背負った人物像はあたかも実在したかも知れないと思う様な、何処までがフィクションで何処までが真実なのかと思う書き方に惹かれて350ページほどの大作を一気に読んでしまった。
    是非山口の瑠璃光寺に五重塔を見に行きたいと思った、見残しにならないように・・・
    著者の久木綾子89歳の作家デビューの本である。

    b042.jpg
    深い河  遠藤周作  
    それぞれの人生を持った5人の男女、男性4人、女性1人がインド旅行へと旅だった
    それぞれの人物像の章に分かれて若い頃からの人生が描かれてその人達のインド旅行を思い立った理由も分かる。そしてその中に流れているのは遠藤周作の宗教観とも言える日本人のキリスト教の考え方、ミッションスクールに通った身にとっては私も同じ考えを持っていると思った。ツアーの客ではないが重要な人物の大津と言う神父の数奇な人生。
    そして全てを飲み込んで流れて行くガンジス河、深い河へと流れて行く。
    最近、白金にある松岡美術館で多くの美しいガンダーラの仏像とヒンズー教の像を見てこの本とも重なりとても感動した。


    沈黙
    沈黙   遠藤周作  

    この本は遠藤周作が17世紀の日本の史実、歴史文書に基づいて創作された歴史小説である。
    ポルトガルのイエスズ会の高名な神学者クリストヴァン・フェレイラが穴吊りの刑に屈して棄教した。
    それが事実かどうかとセバスチャン・ロドリゴとフランシス・ガルベの二人の神父がポルトガルからマカオを経由して日本に密航してきた。(史実によると二人はスペイン人)五島列島に潜入した二人が隠れキリシタンの布教をするが長崎奉行に追われる身となる、二人は一緒に捕まるよりは別々に逃亡して少しでも生きながらえる方法を選ぶがそれぞれ捕らえられてしまう。ガルベはロドリゴの眼の前で棄教を拒みつつ海の中に沈んで行く。キリスト教徒の殉教を見る度に神は何故沈黙しているのかと悩む。ついに捕らえられてロドリゴは信者たちの拷問を受ける苦しみの声を聴く度に神は何故沈黙しているのかと一層悩み、自分が踏み絵を踏めば信者たちは助けると言う声についに踏み絵を踏んでしまう。
    それまでの壮絶な逃亡生活、苦しい悩みに感動しながら読んだ。
    そう言えば、キリストの12人の弟子たちも皆殉教しているがこの時も神は沈黙していたのだろうか?
    キリスト教と言うのは殉教の中に成り立っているのだろうか?
    それにしても政治的理由があるにしても、日本国のこの秀吉の様にキリスト教が布教されるのを拒んだ国は他に有るのだろうかと日本の強固な拒絶の姿勢にも驚いてしまう。






    【2011/07/03 21:16】 好きな本 読んだ本 | COMMENT(7) |
    この記事に対するコメント
    圧倒されます
    次々と絵を描かれ、美術館やコンサートに足繁く出かけられ、
    食事作りも楽しまれるbajiruさま、どうやってこんな
    重い本をしっかりとお読みになられるのかと、そのほうが
    驚きです。
    もしかして、1日を36時間にする術をご存知だとか?
    【2011/07/04 11:00】 URL | サイコ #ZeC0G1NE [ 編集]

    瑠璃光寺
    40台の始め頃、数人の友人と山口方面に行き、瑠璃光寺の五重塔を
    見て参りました。とても素晴らしい所だったと記憶して居りますが、
    久木綾子さんが書いておられたとは知りませんでした。図書館で
    探して読んで見たいと思い、bajiruさんがお書きに成りました
    所は読んでから拝見致します(^_^)v
    有り難うございました。
    【2011/07/04 16:10】 URL | 雲 #mQop/nM. [ 編集]

    お薦めの本
    「深い河」面白かったので、一気に読みました。
    遠藤周作文学全集全15巻が、図書館にあったので、手始めにお薦めの「深い河」を借りました。「スキャンダル」と一冊の本に編集されているので今、読書中です。

    この全集はリクエストの希望が少ないので、早く借りられそうで嬉しいです。
    【2011/07/04 18:23】 URL | みさきむ #t5J/Lb3s [ 編集]


    雲さん、コメント有り難うございます、ブログ仲間のみさきむさんからの紹介で読みましたが本当に感動しました、是非お勧めです。私の感想は読まれたから見てね。
    【2011/07/04 20:37】 URL | bajiru #mQop/nM. [ 編集]

    有り難う!
    みさきむさん「見残しの塔」の紹介を有り難うございました。本当に素晴らしい本でした。
    久木さんのお写真をネットでみたらとても素敵な方でした。
    「沈黙」は今週のクラスに持ってまいります。
    【2011/07/04 20:41】 URL | bajiru #mQop/nM. [ 編集]


    重い小説を読まれて、感想を有り難うございます。
    遠藤周作の本は、手に取っても読み始めるのに力が要ります。
    「深い河」と「沈黙」はいままた読めば以前とは違う読み方が出来るのでしょうが。
    このページをブックマークしておいて、
    時間のある時に読み始めてみたいです。
    見残しの塔、のご紹介有り難うございます、読んでみたいです。
    【2011/07/04 22:38】 URL | わかめ #gGsLOqyI [ 編集]


    わかめさん、見残しの塔は大分前に教えて頂いていたのですがのびのびになっていました。
    雲さんは瑠璃光寺で五重の塔をご覧になったそうですが、私も是非行ってみたいと思う様になりました。

    【2011/07/04 23:07】 URL | bajiru #mQop/nM. [ 編集]


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